労災が起きてしまった場合

労災における企業側の責任

もし労災が起きてしまった場合、企業は下記4つの責任を負う可能性があります。

(1)刑事責任

企業は従業員に安全に労働を実施させる義務があり、これを労働安全衛生法で定めています。労働災害の内容にとっては労働安全衛生法違反を問われる場合があります。
また、業務上過失致死傷罪に問われる場合もあります。

(2)民事責任

労働災害にあった従業員は労災保険が給付されますが、慰謝料は支払われず、休業損害や後遺障害を負った場合の逸失利益についてもその一部しか支給されません。
そのため、事故の損害賠償について、企業側で賠償を求められる場合があります。

(3)行政上の責任

労働災害が発生した場合、労働基準監督署から指導や改善命令が下されます。
また、悪質、重度な違反だと判断された場合、営業停止や免許の取り消しなど、行政処分を受ける可能性があります。

(4)社会的責任

労働災害が報道され、企業の信用や社会的評価が下がる可能性があります。

労災隠しを行なってはいけない理由

「労働災害が起きたが軽度だし、報告は面倒だからしないでおこう」
「労働災害が起きたと騒がれると面倒なので報告書に虚偽の内容を書こう」

などといわゆる「労災隠し」を行うと、労働安全衛生法第100条1項を違反することになり、同法120条5号により50万円以下の罰金が課され、刑事罰なので前科がついてしまいます。

書類の提出や申告しなければバレないだろうと思っていても、従業員からの告発や医療機関からの通報等によって発覚してしまうケースが多々あります。
労災隠しは犯罪ですので、もし労災事故が起こってしまっても、きちんと対処していきましょう。

労災の種類

(1)業務災害

業務災害とは、業務が原因となった災害のことを指します。
高所作業中に転落してしまった、業務設備で怪我をしてしまったなどが例に挙げられます。

業務中の怪我は業務災害となることが多いですが、従業員が指示を守らないで作業を行なった、従業員が業務中の私的な理由で作業を行った、従業員が故意に災害を発生させたなどの場合は、業務災害として認められない場合があります。

また、地震や台風などの天災のよる被災も認められない場合があります。

(2)通勤災害

通勤災害とは、通勤中に起きた災害のことを指します。
この場合の通勤とは、下記のことをいいます。

  • (1)住居と就業場所との間の往復
  • (2)単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動
  • (3)就業場所から他の就業場所への移動

通勤の途中で寄り道をしてしまい、その結果事故に遭った場合など、通勤を中断してしまった場合は認められません。

第三者行為災害

第三者行為災害とは、業務中や通勤中に負ってしまった怪我の原因が、第三者の行為によるものの場合だった時の災害を指します。
具体的には、交通事故や建造物の落下などの事故、業務、通勤中に暴行を受けたなどの場合となります。
第三者行為災害の場合、労災給付の他に、事故を起こした相手方への損害賠償請求も可能です。

労災が起きてしまった場合の弁護士のサポート内容

1:労災発生段階でのサポート

労働災害発生時に、事故現場での対応をサポートいたします。
具体的には、証拠物の保全や、事実関係の調査、その記録の残し方などをアドバイスいたします。

2:各種手続きのサポート

労災保険給付の手続きや、労働者死傷病報告の届出など、労災時における各種書類作成やその届出について、サポートいたします。

3:被災者との交渉

労働災害に遭ってしまわれた被災者の方について、企業様の代わりとなって、交渉を行います。
企業側が損害賠償を行うべきかどうか、その場合金額はどの程度が妥当なのか、被災者側に落ち度はなかったなど、証拠を元に、被災者側と交渉を行い和解を目指します。

4:訴訟対応

もし被災者の方との交渉が決裂してしまった場合、訴訟対応をサポートいたします。
訴訟の場合、企業の責任はどの程度なのかを、残された証拠や判例を基に主張して行くことになります。