企業秘密の漏洩を防止するための注意点

使用者側

企業秘密の漏洩を防止するための注意点

2019.03.12

具体的な就業規則や雇用者との契約の記載例


総論

営業秘密等について、会社(使用者)と労働者との間で、秘密保持契約をきちんと結んでいることは少ないと思います。
では、そのような会社(使用者)が労働者との間で、どのような秘密保持契約を結べばいいのでしょうか。
本稿では、その点について、具体的な記載例を示しながら、検討したいと思います。


包括的な方策 ~就業規則の記載例~

服務規律や遵守事項の記載例

⑴ 会社の施設、設備、製品、材料、電子化情報等を大切に取り扱い保管し、会社の許可なく私用に私用しないこと
⑵ 従業員は、会社の許可なく、書類や社品を会社外に持ち出さないこと
⑶ 従業員は、会社の内外を問わず、在職中、又は退職若しくは解雇によりその資格を失った後も、会社の秘密情報を、不正に開示したり、不正に使用したりしないこと
⑷ 従業員は、退職時に、会社から貸与されたパソコンや携帯電話等、会社から交付を受けた資料(紙、電子データ及びそれらが保存されている一切の媒体を含む)を全て会社に返却すること


個別的な方策 ~雇用者との契約の記載例~

従業員等の入社時の記載例

⑴ 在職時の秘密保持
貴社の秘密情報(製品開発に関する技術資料、製造原価及び販売における価格決定等の貴社製品に関する情報などと明記する)について、貴社の許可なく、不正に開示又は不正に使用しないことを約束いたします。
⑵ 退職後の秘密保持
秘密情報については、貴社を退職した後においても、不正に開示又は不正に使用しないことを約束いたします、退職時に、貴社との間で秘密保持契約を締結することに同意いたします。
⑶ 第三者の秘密情報

ア 第三者の秘密情報を含んだ媒体(文書、図面、写真、USBメモリ、DVD、ハードディスクドライブその他情報を記載又は記録するものという。)を一切保有しておらず、また今後も保有しないことを約束いたします。
イ 貴社の業務に従事するにあたり、第三者が保有するあらゆる秘密情報を、当該第三者の事前の書面による承諾なくして貴社に開示し、又は使用若しくは出願(以下「使用等」という。)させない、貴社が使用等するように仕向けない、又は貴社が使用等しているとみなされるような行為を貴社にとらせないことを約束いたします。


従業員等のプロジェクト参加時の記載例

⑴ 秘密保持の誓約
会社の許可なく、本プロジェクトに関して会社が秘密情報として指定した情報(以下「対象秘密情報」という。)を、本プロジェクトの参画者以外の者に対し開示し、又は本プロジェクト遂行の目的以外に使用しないことを約束いたします。
⑵ プロジェクト終了後の秘密保持等

ア 対象秘密情報を、公知になった事実を除き、本プロジェクト終了後(退職後も含む。)も、不正に開示又は使用しないことを約束いたします。
イ 本プロジェクトを終了するとき、本プロジェクトを担当しなくなったとき、又は会社による要求があるときには、対象秘密情報が記録等された会社の文書等(文書、図面、写真、USBメモリ、DVD、ハードディスクドライブその他情報を記載又は記録するものという。)又は物件であって自己の保管するものを、遅滞なくすべて会社に返還し、その旨書面にて報告いたします。
ウ 対象秘密情報が自己の文書等に記録等されているときには、当該情報を消去するとともに、消去した旨(自己の文書等に対象秘密情報が記録等されていないときは、その旨)、書面にて報告いたします。


従業員等の退職時の記載例

⑴ 秘密保持の確認
私は貴社を退職するにあたり、次に示される貴社の秘密情報(同上)に関する一切の資料、媒体等(文書、図面、写真、USBメモリ、DVD、ハードディスクドライブその他情報を記載又は記録するものをいう)について、原本はもちろん、そのコピー及び関係資料等を直ちに貴社に返還、消去又は廃棄し、その情報を自ら保有していないことを確認いたします。
⑵ 退職後の秘密保持の誓約
貴社の秘密情報を、貴社退職後においても、不正に開示又は不正に使用しないことを約束いたします。
⑶ 契約の期間
本契約は、〇年間有効とします。ただし、秘密情報が公知の事実となった場合は、その時点をもって本契約は終了することとします。


結語

本稿では、事前の方策としての就業規則の記載例、事後の方策としての誓約書の記載例を検討しました。
もっとも、これらの記載例は、一般的な例に過ぎません。一番重要なことは、就業規則や各種誓約書等の書面における条項の内容です。この内容は、個別具体的事情を踏まえた上で記載する必要があります。実際に就業規則等を策定したり、契約書等を作成したりする時には、会社の業務の内容、実態、秘密情報の範囲や利用態様など個別具体的事情に応じ、会社にとってどのような内容とすることが適切であるかという視点から、検討した上で、条項の取捨選択や内容の変更が必要です。
条項の取捨選択や内容の変更といっても、他の法令も含めた法的視点からの検討も必要となります。そこで、専門家の意見を聴きながら、就業規則や誓約書等の契約書について、考えてみませんか。


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