雇用関係が継続中の競業が認められないことはもちろんですが、退職後について競業避止義務を課すことについては、退職者の職業選択の自由(憲法22条1項)を制限する等から、契約の仕方によっては、公序良俗に反し契約自体が無効(民法90条)となることもあります。そこで、競業避止義務契約の有効性について、判例によるポイントを確認します。
会社(使用者)側に守るべき利益があることを前提として、競業避止義務契約が過度に職業選択の自由を制約しないための配慮を行い、会社(使用者)側の守るべき利益を保全するために必要最小限度の制約を労働者に課すものであれば、当該競業避止義務契約の有効性自体は認められると考えられています。
具体的には、
①守るべき企業の利益があるかどうか、①を前提として競業避止義務契約の内容が目的に照らして合理的な範囲に留まっているかという観点から、
②従業員の地位が、競業避止義務を課す必要性が認められる立場にあるものといえるか、
③地域的な限定があるか、
④競業避止義務の存続期間、
⑤禁止される競業行為の範囲について必要な制限が掛けられているか、
⑥代償措置が講じられているか
等を考慮して、規定自体の評価及び同契約の有効性判断を行っていると整理することができます。
もっとも、判例はあくまで個別事案に対する判断として行っているため、このような規定であれば、必ず有効となると一概に言えない点には注意が必要です。