事例09解雇されたアルバイト従業員からの解雇無効の主張に対し、早期(受任から2か月程度)に協議で従業員の自主退職を前提に月額給与の約7か月相当額の解決金を支払って解決した事例
- 担当弁護士永野 賢二
- 事務所久留米事務所
ご相談内容
依頼主
I社さん(女性) / 職業:飲食業
Aさんは、I社の運営する飲食店でアルバイトとして勤務していましたが、新型コロナウイルスの影響による店舗の休業や人件費の削減のため、Aさんに解雇予告通知書を送付してAさんを普通解雇しました。
これに対し、Aさんは、弁護士に依頼してI社に対し、解雇の有効性を争うこと、解雇を受け入れる意思はないことを通知しました。
そのため、I社は、今後どう対応すべきか分からず、当事務所に相談に来られました。
なお、I社の運営する飲食店は今後も営業は続けていくとのことであった上、アルバイト従業員の中で人員削減のためにAさんを解雇した理由もあまり明確ではありませんでしたので、解雇の有効性に疑問が残る状況でした。
弁護士の活動
当事務所は、Aさんの代理人に対し、バックペイを支払うことを前提にAさんに自主退職を行ってもらえないか協議をしました。
この点、Aさんの代理人は、バックペイとして平均給与の1年(12か月)分相当額の支払いを請求されました。
これに対し、当事務所は、バックペイの金額についてI社との協議の上、平均給与の6か月分を前提とした支払いを提案し、その後も粘り強い交渉を行いました。
解決結果
その結果、Aさんの自主退職を前提に、月額給与の約7か月分(30万円)の解決金を支払う旨の和解が成立し、解決に至りました。I社からの最初の相談から約2か月での早期解決でした。
なお、I社は、事業活動に関するトラブルを補償する損害保険に加入していたため、一部自己負担は発生したものの、解決金の一部や弁護士費用は上記保険から賄うことができました。
弁護士のコメント
今回のケースのように、会社が行った解雇が無効になる可能性がある場合には、これを前提として従業員に自主退職してもらう代わりに解決金(バックペイ)を支払う方法を検討すべきです。
また、今回のケースのように、自社で加入している業務災害に関する損害保険を利用することで、不当解雇や慰謝料請求に関する損害賠償金や弁護士費用が保険金で賄われることもありますので、このような保険に加入しておくことも事業者にとって有用だと思います。
従業員との労務トラブルが発生した場合は、自社で何らかの行動に踏み切る前に、是非、労務管理に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
文責:弁護士 永野 賢二